競泳水着コレクション

FASTSKIN(ファーストスキン)

はじめにファーストスキン(あるいは日本国内のスピードブランド)の製造時期について簡単に説明すると、
ミズノ時代(~2007年5月)と、ゴールドウイン移行後(2007年6月~)に分かれる。
更にもう少し踏み込むと、ミズノ時代はニット素材(アクアブレードⅡR、アクアブレードex)を使用したシリーズ、 ゴールドウインは布帛(ふはく)素材を主としたシリーズである。 (ただし、ゴールドウインでも一部モデルでニット素材が存在する)
当サイトでは主にニット素材を扱うため、布帛素材は趣味の対象外である事を予めお断りしておく。

1、ミズノ時代
ファーストスキンはシドニー五輪に向けてスピードとミズノが共同開発した競泳水着で、2000年に登場した。
注目すべきはサメの皮膚構造を模して開発したという、アクアブレードⅡRと名付けられた素材である。 これは素材表面にびっしりと並んだ微細な溝と、ウロコ状の撥水プリントとの相乗効果で表面摩擦抵抗を更に減少したというものである。 そのメカニズムは日経電子版 五輪競泳水着「50年の進化」飽くなき抵抗との戦い の中で紹介されているので、是非ご覧頂きたい。

初期ラインナップは、レディス用が足首まで覆う「ファーストロングジョン」、ハーフスパッツの「ファーストレッグスーツ」、ハイレグモデルの「ファーストボディスーツ」の3種類で、 いずれも糸を使わず高熱圧着処理を施したGスーツタイプとなる。 背面はオープンバックとクローズバックを組合わせたような形状で、短いジッパーが付いた。 これと「スーパーストレッチシーム」の効果でかなり締め付けが強い着用感が特徴だ。
メンズモデルはロングとハーフスパッツモデルに加え、女性用のような上半身も包むモデルも用意する一方、定番の競パンはラインナップされなかった。 多くの低抵抗素材で身体を覆う方が有利という表れだ。
途中カラーの追加やベーシックな縫製モデルの投入、そして本命とも言える「フルボディスーツ」を追加したりと、初代ファーストスキンは徐々にバリエーションを増やしていった。

2003年にはソフトフィットタイプのマテリアル「アクアブレードex」を採用したファーストスキンexが登場。
ファーストスキンの機能を備えつつ、優れた伸縮性により適度なフィット感と着やすさをアップさせたという。 これは初代の着心地に対する意見が多かったという表れではないだろうか。ファーストスキンexは 鮮やかなグラデーションと豊富なカラーバリエーションを揃え、ファーストスキンのイメージを一新した。

2004年にはアテネ五輪に向けて開発された新モデル、ファーストスキンFSⅡが登場。
主素材となるアクアブレードⅡRはキャリーオーバーだが、柔軟性に優れた滑らかな素材「フレックススキン」を部分的に使用し、複合素材のモデルとなった。 更にF1や航空機開発に用いられる流体解析方法「CFD」を導入し、更なる進化が図られた。 トップスイマーを3Dスキャンしたというバーチャルスイマーを使い、水着表面に当たる水の速度や抵抗値をコンピュータ解析。 マネキンやトップスイマーによる実験も重ね、開発が進められたという。 メンズ、レディス共にスーツタイプには胸にシリコンの突起「Turbulence Management System」(乱流制御システム)が付き、身体の凹凸による形状抵抗を抑えた。 バックファスナー仕様ではこの突起が背面にも配置された。

2、ゴールドウイン時代
2007年、スピードブランドに大きな転機が訪れる。 長年スピードとライセンス契約を結んでいたミズノが契約を解消し、新たにゴールドウインがパートナーとなった。
この時点で現行商品であったファーストスキンFSⅡはゴールドウインに引き継がれ、生地をリファイン(ポリエステル75%-ポリウレタン25%から同74%-26%へ変更)した上で「ファーストスキンFSⅡプラス」として販売が続けられた。 このFSⅡプラスは、アクアブレードⅡRの特徴である微細な溝とウロコ状の撥水プリントは受け継がれたが、胸に付くシリコンの突起は省略された。 もちろんゴールドウインの品番が付与されている。
そして同じ2007年、スピードは全く新しい競泳水着「ファーストスキンFS-PRO」を発表した。(発表は3月、発売は6月から) FS-PROはこれまでの常識だったニット素材から、超極細ナイロン繊維で織った布帛(ふはく)素材「レーザーパルス」へと進化。 極薄で超軽量、撥水性に優れ、強く身体を締め付ける素材で、まさに新時代の幕開けであった。
2008年「ファーストスキン・レーザーレーサー」が登場すると世界記録を次々と塗り替え、高速水着の時代へと突入した。 ところが高速水着は競泳水着の在り方について物議を醸し、2010年に規定変更となった。
スピードは即座に新規定に適合したモデル「レーザーレーサーエリート」、「レーザーレーサープロ」をリリース。いずれも冠にファーストスキンの名が付けられた。

一方、国内向けのニットモデル「フライングフィッシュ」にもファートスキンの名が与えられ、2010年にFASTSKIN XTへ名称変更した。 (FASTSKIN XTはフライングフィッシュの項で紹介する)
FASTSKIN XTで忘れてはならないのがショップオリジナルの企画で叶ったFSⅡデザインの復刻モデルだ。 素材にFASTSKIN XT-Wを使用するためオリジナルと異なるが、かつてのFSⅡが再現され話題を呼んだ。

現在もレーシングトップモデルにはファーストスキンが与えられ、その名は脈々と受け継がれている。

FASTSKIN コレクション

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FASTSKIN 構造観察

FASTSKIN アクアブレードⅡRをマクロで撮影する
ボディラインに沿って美しく並んだ撥水プリントに目が行くが、生地の表面に細かな縦溝が走っているのが分かる。 より平滑な素材が求められていた時代の中、非常に画期的な素材であったと言える。
FASTSKIN アクアブレードⅡRを更に最接近で観察する
繊維の編み目と編み目の間に非常に細かな溝が設けられているのが見える。 溝の深さは0.1mm、幅は0.5mmという極めて微細なもので、それが1.0mm感覚で並ぶと言う。 この細かな溝に小さな縦渦を発生させ、生地表面近くに発生する乱流を打ち消す。
FASTSKIN FSⅡで採用された新マテリアル“フレックススキン”
フレックススキンは柔軟性に優れた滑らかな素材で、泳ぐとき身体が大きく動く部位に採用された。 着心地という面では初代ファストスキンから大きくブラッシュアップされた部分だ。
FASTSKIN FSⅡの乱流制御システム“Turbulence Management System”
胸に付いたシリコン状の突起と言えば、かつてS2000で採用された「ヴォルテックス・コントローラー」を思い起こすが、 126個のシリコンの突起とその配置の形状からして、ヴォルテックス・コントローラーと同じと言って良いだろう。
FASTSKIN ヴォルテックス・コントローラー(S2000)とTurbulence Management System(FSⅡ)の違いは背面にある。 前者は胸部の突起のみだったが、後者はジッパーバックモデルに限られるが、背面にも突起が付く。
FASTSKIN ファーストボディスーツのジッパー部分
ジッパーのスライダーの持ち手はスピードのマークが入った特別製のものが使われる。 持ち手を上にしても、手を離すと自動で下がる機構となっており、泳ぐ時の抵抗を徹底的に考慮した設計と思われる。
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