競泳水着コレクション

HYDRO CD(ハイドロCD)

ハイドロCDは「もう一枚の肌」をコンセプトに、生地を薄く、表面をフラットに進化させた小抵抗素材である。 ハイグレードなカチオン染料を使用し、色鮮やかでありながら耐光堅牢性にも優れ、屋外でも退色しにくいのが特徴だ。 強光沢な素材ではないが、謳い文句の通り鮮やかな色が目を引く。一方、白色や黄色など淡色は透ける事でも有名だ。 またカラーにより肌触りや感触が微妙に異なり、これは染料に起因するのではないかと考える。

ハイドロCDの登場時期について調べたところ、残念ながら資料不足のため特定には至らなかった。 登場時期については引き続き調査中とするが、少なくとも1993年には製造されていたようだ。
2000年代に入るとアシックスは次々と新素材を投入し、ハイドロCDは競技用の第一線である「ファイナリストライン」から退く。 ここからハイドロCDはアシックスの基本マテリアルという位置付けで、主に「コンペティティブライン」(トップモデルの一つ下のクラス)でラインナップが続いた。 その多くがプリントモデルであったが、ここでALS103というモデルに注目したい。
このモデルはハイドロCDでありながら、ハイドロSPを使った初代ティーライナーと同様のステッチラインが入ったという、非常に興味深いモデルである。 カットは若干低いマイティーカットで、カラーもモノカラーになるが、雰囲気は初代ティーライナーそのもの。 残念ながら当館は所有が無いためレビューはお届け出来ないが、これはハイドロCD版ティーライナーと呼んでも差し支えないのでは。
そしてハイドロCDはチームオーダー(別注)で生産されたものも多く、 中でも白一色で作られた、所謂「白アシ」はマニアの間で話題となり、高値で取引されているのはご存じの通りである。

ハイドロCDは根強い人気に支えられ、気が付けば驚異とも言えるロングセラー商品となっていた。 胸元に付くブランドマーク(メーカーロゴ)も三世代に渡るのは驚きの一言だ。 競泳水着マニアに愛され、支えられたからこそのロングセラーではなかろうか。
しかし2020年7月、長きに渡り製造が続いたハイドロCDは惜しまれつつ廃盤となった。

HYDRO CD コレクション

ALS142 ALS85T ALS85T ALS86T

HYDRO CD 構造観察

HYDRO CD 構造観察 三世代に渡るブランドマーク
アシックスのイニシャル「a」をモチーフとした“アシックススパイラル”は1992年の誕生で、意外と歴史が古い。 リニューアルされた二世代目は2007年から使われている。
HYDRO CD 構造観察 ホワイトカラーの透け具合
ドライの状態でも生地の下の文字が読めるほど透ける。 濡らした時はもっと透けるが、その好みは大きく分かれる。 ハイドロCDは白色に限らず淡色は激しく透けるので、プールでの着用はしっかりとしたインナーを着用する等、注意が必要である。
HYDRO CD 構造観察 “スパイラルカット”と呼ばれるカッティング
スパイラルカットはハイドロCDの他にP2でも採用されたが、P2が時代に合わせていくつかのカッティングが採用されたのに対し、 ハイドロCDは一貫してスパイラルカットが採用された。 個人的にハイドロCDと言えば腰に入るシーム(縫目)が印象的で、ハイドロCDを特徴付ける形状だと思う。
HYDRO CD 構造観察 背ストラップのクロス部分に採用された“ハイドロメッシュ”
ハイドロメッシュは泳ぐ速度に比例して振動し、水の抵抗が生じるというクロス部分に採用した素材で、ハイドロCDとP2で採用された。 モデル(販売時期?)によってハイドロメッシュ部分の範囲(面積)が異なる。(画像は広いタイプのもの)
HYDRO CD 構造観察 これは過去に所有していた白色のハイドロCDで、2002年頃に購入したと記憶する。
当時ネット仲間がチームオーダーで発注するという話があり、その誘いに加わって購入した。 白地にロゴとハイドロメッシュのブルーが良く映えて、とても気に入っていた。
HYDRO CD 構造観察 過去所有の白アシより、ハイドロ部分のアップ画像
このモデルはハイドロメッシュの範囲(面積)が狭いタイプで、このタイプの方が良く見かける。 もちろん別注ではハイドロメッシュの色指定も可能で、ワンポイントのような配色も可能だった。
HYDRO CD 構造観察 2009年カタログより、ALS103とAMA103
初代ティーライナーと同様のステッチラインを持つモデル。 カットはハイカットより若干低いマイティーカットとなるが、その佇まいは正にハイドロCD版ティーライナーである。 残念ながら当館には所有が無いため、今後導入したいモデルの一つだ。
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